top of page
検索

船は来ているのに、なぜ中古車を載せられない?

執筆者の写真: shogo shirako
shogo shirako
9月17日
読了時間: 10分

世界の航路トラブルがRORO船に与えている影響

「ヨーロッパに車を送りたいのに、どうしてパナマ運河の話が関係するの?」

「アメリカ向けなのに、中東のホルムズ海峡が関係あるの?」

「船のスケジュールは出ているのに、なぜ車を載せられないの?」

最近、中古車の海外輸送について、このような疑問を持たれる方が増えています。

実は現在、世界各地で起きている問題は、それぞれがバラバラに影響しているわけではありません。

船が遠回りする。

一航海に時間がかかる。

同じ期間に運航できる船が減る。

燃料価格が上がる。

そして、中古車を載せられるスペースが減る。

全部つながっています。

今回は、なぜ2026年現在、ヨーロッパや北米を中心にRORO船で中古車を送りにくくなっているのかを、なるべく分かりやすく整理してみます。

※この記事は2026年9月時点の状況をもとにしています。海上輸送の状況は今後変わる可能性があります。




まずヨーロッパ向け。近道のスエズ運河を使いにくい

日本やアジアからヨーロッパへ船で向かう場合、本来の近道は、

インド洋 → 紅海 → スエズ運河 → 地中海 → ヨーロッパ

というルートです。

ところが現在、紅海・バブ・エル・マンデブ海峡周辺では安全上のリスクが続いています。

そのため、すべての船会社が同じ対応をしているわけではありませんが、自動車船では紅海・スエズ運河を避けて、アフリカ大陸南端の喜望峰を回る運航が多くなっています。

当然、かなりの遠回りです。

航海日数が延びれば、一隻の船がヨーロッパへ行って戻ってくるまでに、以前より長い時間がかかります。

これは単純に、

「到着が少し遅くなる」

だけの問題ではありません。

一航海に時間がかかれば、同じ船を次の航海に使える時期も遅くなります。

結果として、同じ期間に運航できる便数そのものが減っていきます。



「遠回りするだけ」が、なぜ他の地域にも影響するの?

自動車船は、飛行機のように「この1隻だけが日本とヨーロッパを往復している」という単純なものではありません。

船会社は限られた数の船を、世界各地の需要に合わせて配船しています。

そのため、ある航路で一航海にかかる日数が長くなると、船会社全体として使える船の余裕が少なくなります。

たとえば、これまで一定期間に4便運航できていたものが、航海日数の増加によって3便しか回せなくなったとします。

船そのものが1隻消えたわけではありません。

しかし、一定期間に使える輸送能力は実質的に減っています。

これが非常に大きなポイントです。




一方、北米ではパナマ運河に別の問題が起きています

北米、特に北米東側へ向かう船に関係してくるのがパナマ運河です。

パナマ運河は、海をそのまま横切る水路ではありません。

閘門(こうもん)という設備を使って、大量の真水で船を上げ下げしながら、大西洋側と太平洋側を行き来させます。

つまり、船を通すためには水が必要です。

ところが現在は、雨季に入ってもパナマ運河流域の降水量が想定を下回っており、通航できる船の枠が制限されています。

この影響はコンテナ船だけではありません。

RORO船、自動車船も、予約枠や通航制限の影響を受けます。

つまり、

「パナマ運河まで行けば、そのまま通れる」

というわけではないのです。




「じゃあパナマ運河を使わず、南米の下を回ればいいのでは?」

地図を見ると、そう思いますよね。

パナマ運河を通れないのであれば、そのまま南へ向かい、南米大陸の一番下を回って大西洋へ出ればいい。

理屈としては可能です。

ただし、これは簡単な代替ルートではありません。

まず、とにかく遠い。

さらに南米最南端のケープホーンやドレーク海峡周辺は、世界でも特に海象の厳しい海域として知られています。

弊社が船会社から聞いている話でも、この海域では6~8m級の波になることがあり、自動車船を気軽に迂回させられるような海ではない、という説明を受けています。

もちろん、

「毎日必ず8mの波が来る」

という意味ではありません。

ただ、

「パナマが使いづらいなら南米の下を回ればいい」

と簡単に置き換えられる航路ではない、ということです。

距離が延びれば航海日数も増えます。

燃料も余計に必要です。

さらに荒天による運航リスクも考える必要があります。

結果として、北米東側へ向かうRORO船についても、以前と同じ感覚で配船することが難しくなっています。



さらにホルムズ海峡。これは中東向けだけの話ではありません

もう一つ、現在大きな影響を与えているのがホルムズ海峡です。

ここで少し注意したいのが、

ヨーロッパへ行く船がホルムズ海峡を通るから影響する

という話ではないことです。

日本からヨーロッパへ向かう航路で直接問題になるのは、紅海・スエズ運河側です。

では、なぜホルムズ海峡が関係するのでしょうか。

理由はエネルギー価格です。

ホルムズ海峡は、中東で生産された原油やLNGを世界へ運び出す非常に重要な海上ルートです。

ここで船の通航が大きく減ったり、緊張が高まったりすると、原油価格や燃料価格に影響します。

そして、船は大量の燃料を使って動いています。

つまり、ホルムズ海峡の問題は、

「中東向けに車を送る人だけの問題」

ではありません。

ヨーロッパ向けでも、

北米向けでも、

アフリカ向けでも、

中東向けでも、

船を動かすコスト全体に影響してきます。




ここまでなら「遅くなって、高くなるだけ」に見えます

ここからが、中古車輸出では特に重要なところです。

世界各地で航路が長くなったり、通航できる船が制限されたりすると、

一隻あたりの航海日数が長くなる

↓

船の回転が遅くなる

↓

同じ期間に日本へ来られる船が減る

という状態になります。

では、その船の中では何が起きるのでしょうか。




RORO船は、新車輸送が大きな割合を占めています

自動車専用船は、名前のとおり大量の車を運ぶための船です。

日本から出る自動車船では、自動車メーカーの新車が大きな割合を占める便が多くあります。

新車輸送は、メーカーの生産・販売計画などに合わせて、長期的な輸送計画や契約に基づいて動いています。

その一方で、中古車は船会社や航路によって運用は異なるものの、新車などの計画貨物を積んだうえで確保できるスペースを利用するケースが多くあります。

ここで、先ほどの「船の回転が遅くなる」が効いてきます。

たとえば、これまで一定期間に4隻来ていた船が3隻になったとします。

しかし、自動車メーカーから運ばなければならない新車が、同じタイミングで大きく減るとは限りません。

すると、

1隻あたりに積む新車の割合が上がります。

その結果、

中古車に回せる空きスペースが減ります。




さらに今は、すでに載せられなかった中古車が待っています

そして現在は、単に

「中古車スペースが少ない」

だけではありません。

すでにその少ないスペースを待っている中古車があります。

たとえば、ある船に載せる予定だった中古車がスペース不足で積めなかったとします。

その車は消えるわけではありません。

次の船を待ちます。

ところが次の船もスペースが少なければ、また一部の車が残ります。

すると、

前便からの未積み車両

↓

既存のバックオーダー

↓

さらに新しい輸送依頼

という形で、船積みを待つ車がどんどん積み上がっていきます。

もちろん、必ずしもすべてが単純な先着順というわけではありません。

船会社や航路、契約内容によってスペースの割り当て方は異なります。

ただ、実務上はすでに船積みを待っている大量の車両があるところへ、新しい依頼が追加されていく状態です。




「次の船に、この1台だけ入れてください」が難しい

特に、新しくご相談いただく単発の輸送や、個人のお客様からの1台だけの輸送では、

「来月の船がホームページに載っているので、この船に1台だけ入れてください」

と言われても、簡単には対応できない場合があります。

なぜなら、その船の中古車スペースには、すでに前の船から待っている車がある可能性が高いからです。

船は来ています。

船のスケジュールもあります。

しかし、

中古車を載せられる空きスペースがない。

さらに、

その空きを待っている車も、すでにたくさんある。

これが現在の状況です。





「船のスケジュールがある」=「中古車を載せられる」ではありません

ここが、現在のRORO輸送で一番分かりづらいところかもしれません。

船会社のスケジュールを見ると、

「10月○日 日本出港」

「11月○日 日本出港」

と船の予定が掲載されています。

そのため、

「船が来るんだったら載せられるでしょう?」

と思うのは当然です。

しかし現在は、

船が来ること

と、

その船に中古車用のスペースがあること

は別の話です。

さらに現在は、そのスペースに対してバックオーダーも積み上がっています。

したがって、

船のスケジュールがある=新規の中古車をすぐ載せられる

ではありません。




ヨーロッパの問題、アメリカの問題、中東の問題。実は全部つながっています

ここまでを一度まとめると、こうなります。

ヨーロッパ側では、紅海・スエズ周辺の安全上の問題によって、喜望峰経由への迂回が増えています。

その結果、航海日数が長くなり、船の回転が遅くなります。

北米側では、パナマ運河流域の雨不足によって、通航できる船の枠が制限されています。

RORO船もその影響を受けるため、北米東側への配船が難しくなります。

では南米の下を回ればよいかというと、距離が大幅に長くなり、さらにケープホーン・ドレーク海峡という厳しい海域を通るため、単純な代替ルートにはなりません。

中東側では、ホルムズ海峡周辺の混乱が原油・エネルギー価格に影響し、その結果、船舶燃料を含む運航コスト全体に影響してきます。

そして、これらが最終的に、

一航海が長くなる

↓

船の回転が遅くなる

↓

輸送能力が足りなくなる

↓

1隻あたりの新車比率が高くなる

↓

中古車スペースが減る

↓

載せられなかった中古車が次便へ持ち越される

↓

バックオーダーがさらに増える

という形で、中古車輸出までつながっています。

だから、

「ヨーロッパ向けなのに、なぜパナマ運河?」

「アメリカ向けなのに、なぜ中東?」

という話になるわけです。

世界の海上輸送は、それぞれ完全に独立しているわけではありません。

一つの場所で船の動きが悪くなると、その影響は配船や燃料コストを通じて、別の航路にも広がっていきます。




2026年末までは、ヨーロッパ・北米向けRORO船は厳しい見通しです

弊社が現在各船会社から受けている案内や、実際の中古車スペースの状況を見る限り、少なくとも2026年末までは、日本発のヨーロッパ・北米向けRORO船について非常に厳しい状況が続くと考えています。

もちろん、仕向地や船会社、本船によって状況は異なります。

今後、情勢が変わればスペース状況が改善する可能性もあります。

ただ、現時点では、

「○月の船に必ず載せられます」

というご案内が難しいケースが増えています。

急いで車を送りたい場合には、RORO船の空きを待ち続けるのではなく、コンテナ船による輸送も含めて検討する必要があります。




今のRORO船を一言でいうと

現在の状況をものすごく簡単に言えば、

時間がかかる。

費用も上がる。

そして、費用を払えば必ずスペースが取れるわけでもない。

という状態です。

「船がない」のではありません。

船は来ています。

しかし、その船が世界を一周して戻ってくるまでに時間がかかり、限られた船の中では新車などの計画貨物が多くを占め、わずかな中古車スペースには、すでに船積みを待っている車両が積み上がっています。

これが、

「船のスケジュールはあるのに、中古車を載せられない」

という、一見不思議な状況が起きている理由です。

最新記事

すべて表示
輸出通関の「申告」って何をしてる?コンテナに車+荷物を入れたときに詰みやすいポイントまとめ

車を海外に送る話をしていると、だいたい途中で出てくるのがこれです。 「申告って、いったいなんですか?」 正直に言うと、ここが分かると輸出が一気に“現実的”になります。 逆にここがふわっとしたままだと、コンテナの中身が増えた瞬間に難易度が跳ねます。 まず結論からいきます。 申告は「税関に、箱の中身の自己紹介をする作業」です。 (注:申告=税関に「何を」「いくらで」「どこへ」出すかを正式に伝える手続き

 
 
 
個人で中古車を海外に送るとき、「誰がどこまでやるの?」で勘違いが起きるポイント

いきなり正直に言うと。 個人で車を海外に送るって、やってること自体はシンプルに見えるのに、なぜか途中で「え、そこ誰の担当?」が起きがちです。 理由はカンタンで、中古車の輸出って“宅配便っぽい顔をしてるけど中身は別モノ”だから。 今日は、 輸出.comのガイド のまとめじゃなくて、勘違いが起きる地雷だけを厚めに整理します。 (このブログはガイドの1セクション目にリンクされる前提の参考記事、って立ち位

 
 
 
EV(電気自動車)は海外に送れない?!

最近は、世の中「猫も杓子もEV」という雰囲気があります。 新車のニュースを見ても、メーカーの発表を見ても、 とにかくEV、EV、EV。 いかにも「もう全部EVになる」ような空気感がありました。 ただ、実際の販売台数を見ると、EVよりもハイブリッド(HV)の方が売れている、 というデータも珍しくありません。 イメージと現実が、少しズレている。 ここは一度、冷静に見ておくポイントです。 とはいえ、EV

 
 
 

コメント


bottom of page